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Review
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Exhibition Review
齋藤 周 展 「春を兆す日」 【開催を終えての再考論評】

2009年3月25日(水)~4月12日(日) 3F mini gallery
文 / 小金 沢智 (neutron tokyo) 写真 / 表 恒匡

 カンヴァスの貼られていない木製パネルに直接アクリルで色がのせられている。縁に地の色が見えているものもあるが、基本的に下地は白である。そこには後ろ 姿の女の子が大小を変えて頻繁に描かれ、黄色を中心とした発色のよい色彩からなる画面はあたかもパズルのピースを繋げるように壁面を構成している。それだ けではない。細長く切り分けられ湾曲した木片が手すりや棚、屋上へと繋がる梯子に貼付けてあるかと思えば、棚および床にはキューブが点々と置いてある。そ れらの色彩の調子は平面と同様で、フォーマットこそ異なるが共通性を持つ。三階の窓から見える中庭に植わるコブシの木は青々とした葉を茂らせ、展示スペー スの内と外がゆるやかに繋がり交差する。



 



  このように齋藤周は作品を様々な場所に配置することによって空間と空間をつなげ、鑑賞者はそれらを発見することによって内部空間を拡張させてゆく。それ は一階・二階を一人の作家が、三階を別の作家がそれぞれ展覧会をすることから起こりえる当ギャラリーの難しさを逆転させた展示だった。二階がサロンとして の役割を担う空間であり必ずしも展示だけを目的としていないといっても、作家にとってそこは展示空間であり作品を展開する場である。したがってたとえば今 回のように同時開催の寺島みどりが吹き抜けに大作を展示すれば、それはどうしても齋藤の展示に少なくない影響を及ぼしてしまう。三階の展覧会は、鑑賞者が 一階・二階の印象を残したまま見られることが予想されるのである。しかし齋藤はそれを自身の展示にうまく取り入れることに成功した。



  搬入の二日前、北海道から早くも東京入りした齋藤が、寺島と打ち合わせでもできればと言っていたことが思い出される。その日寺島はまだこちらに来ていな かったし、搬入当日にそれがなされたのかどうか私はその場に立ち会っていないから知らない。しかしここで重要なのは、思いの程度こそ私が与り知るところで はないものの、齋藤が寺島の展示を気にかけていたという事実にほかならない。そしてそれはおそらく、作家同士のライバル意識というような形をとっていな い。つまり齋藤は、自らの展示空間と寺島のそれとを分断されたものではなく繋がっているものとして考えていたのではかったか。だからそこに掛けられる作品 を知りたいと思い、展示について話したいと望んだ。実際、寺島が吹き抜けに掛けた【彼が呼んだ春】は緑色を基調にしたものであり、それは緑色と親和性の高 い黄色を中心にした作品を展開した齋藤を喜ばせることになった。齋藤の作品のあり方を象徴するエピソードではないだろうか。


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