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Review
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Exhibition Review
稲富 淳輔 展 「アンジェリコの鍵盤」 【開催を終えての再考論評】

2009年4月15日(水)~5月10日(日) 3F mini gallery
文 / 小金 沢智 (neutron tokyo) 写真 / 表 恒匡

 稲富淳輔の制作の関心はどこに向けられているか?おそらく、〈存在を立ち上げること〉に向けられている。したがって稲富が作り出す作品がうつわであるかオ ブジェであるか、という分類は意味がない。用途の有無によってある存在を区分けするという態度は確かに合理的であり私もそうした分類を用いることもある が、稲富はそういうものを超えたところを目指している。抽象的に過ぎるかもしれないが、ここではひとまずそう仮定しよう。私たちにはその前提が必要である。

  


  

  作家にとって初めてとなる今回の個展の出品作、《アンジェリコの鍵盤》(2009年)。素材は土だけであり釉薬はまったく使われておらず、作品を特徴づ けているその白は、五度、窯で焼き上げることで誕生している。「鍵盤」とは作家の指の動きがその表面に刻み込まれているために採用された言葉だが、そうし て完成した作品には手の痕跡に加えあたかも生き物の皮膚のような微細な皺がそれぞれ生まれており、色みも白を基調にしながら微妙に異なっている。それらは ときに乾いた大地の褐色を、あるいは新緑の植物を思わせる色を私たちに覗かせる。

  

  全56点の作品は、大きく三つの形状に分けることが可能である。すなわち、(1)棒状のもの、(2)球状のもの、(3)それらの中間のもの、であり、い ずれも大小の差はあれ口がついている。それらは壁に掛けるように展示された一部の作品を除き棚に並べられたが、いずれの場合も大きさやかたちの異なるもの がリズミカルに配置されたという点で共通している。その様子はなだらかに連なる山の稜線に似て心地よく、だから自然光を多く取り込むことのできる三階での 展示は稲富の作品にふさわしかった。一階、二階であったならこのようにはいかない。しかしこれは一方で、稲富の作品は、人がいない場所こそふさわしいので はないか?という思いを抱かせもする。人が死んでも、作品は残る。作品はその現実を体現しており、それゆえ冷たい印象を与えもするのである。

   

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・開催展示再考論評1

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・開催展示再考論評2

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・展示企画書


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