今回の個展では、それまで床置きが常だった作品をギャラリーの椅子や脚立と組み合わせて展示した。三階は一部天井が高く、そのままだと視線が低くなりすぎ ることを考慮してだが、脚立と組み合わされたエンジンはロボットよろしくその先端からレーザー光線を発するかのような出で立ちになった。飯田の作品は既に 存在する機械類の模倣ではなく、それらの知識を有する飯田を通過して生み出されたかたちだから、このような発想も許されるおおらかさがある。

　

　 同様の場所に展示された作品として蒸気機関車があるが、それがエンジンや工場とは異なって実際に動くという点は重要である。その中に動力があるわけでは なく、手で押すことによって車輪が前後に動くだけではあるが、それでも動くのか動かないのかではこれらの作品の見方は大きく異なる。作品に触ることは厳禁 ではあったが、飯田の作品の最大の面白さは、色やかたちといった視覚的な要素だけに留まらず、手で触れてそのヴォリュームを感じ、実際に動かすことすらで きるプロセスにあると思うから、そのことはここに記しておく必要がある。

　　

だから今後期待されるのは、作品のクオリティはもちろんのこと、大人も子供も問わず来場者の誰もが自由に触れて楽しむことができるような作品の展示であ る。破損など憂慮する要素はあるが、たとえ小品でもそうした作品が会場にあるのとないのとでは印象が大きく違う。しかもそれが作品の大きな見所の一つであ るならば、ぜひ攻略して欲しいと思うのである。

　　

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