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Review
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Exhibition Review
伊吹 拓 展 「導音」【開催を終えての再考論評】

2009年8月26日(水)~9月13日(日) 1F main gallery + 2F salon
文 / 小金 沢智 (neutron tokyo) 写真 / 廣瀬 育子

  コットンを下地に油絵具を重ねていく。制作の過程ではその画面を意図的に傾けて地の上に絵具を流れさせる。滑らかな絵具の軌跡の重なりによって醸成された 画面は、油絵具のごてごてしたイメージを軽やかに逸脱し、瑞々しい。日本画の画材を用いて抽象的な画面を作り出す間島秀徳の手法もそうであるように、その きわめて身体的な描法は、画面を自らの手でコントロールしつつ、一方でコントロールの効かない、偶然の作用に作品を委ねているようだ。事実伊吹は作品の 「完成」として、その画面が自分にとって未知のものになっているかどうかを重要な要素に挙げている。現在のスタイルになり十年ほどの伊吹の作品は、誤解を 恐れずに言えば同じ手法による抽象絵画であるがゆえに、ともすればイメージが似てしまうことがあるのかもしれない。だからこそ伊吹は自身にとっても、鑑賞 者にとっても未知の領域に賭けているのではないか。




  
左:《 導音 》 (2009年 / F150号変型 / oil on cotton)
右:《 導音 》 (2009年 / F150号変型 / oil on cotton)




《 on paper work 》(2009年 / 1,030×727mm / oil on paper)


  100号サイズがベーシックと言うように、伊吹の作品は大作が基本である。キャンバスや紙を下地にした小品も出品していたものの、100号に加え150 号、200号の作品が今回のハイライトだ。元々当ギャラリーは住居であり一階の天上高は二メートル弱とギャラリーとしては低く、そのため大きな作品は空間 を圧迫してしまう怖れがあるが、伊吹の作品は大作でありながらもその空間にあって窮屈な印象を感じさせなかった。今回の個展のために制作され、「導音」と 等しく名づけられた作品はそれぞれ色や構成の違いがあるのは当然だが、いずれも隣り合う、あるいは向かい合う作品が響き合い、全体として一つの作品かのご とく成立していたことがその理由だろう。吹き抜けの空間にあわせて制作された作品は、独立する二つの面が一つの画面の上下に並ぶよう構成されており、今回 の個展の全体的な印象を一点に集約しているようだった。



 
左:《 on canvas work 09 》(2009年 / F4 / oil on canvas)
右:《 導音 》(2009年 / S100 / oil on cotton)

  

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・開催展示再考論評1

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・開催展示再考論評2

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・展示企画書


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