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Review
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Exhibition Review 2
衣川 泰典 展「未知なものと既知なもの」【開催を終えての再考論評】

  これはなにも《みえないものにふれてみる# 5(チョウチョ)》(紙に印刷物・アクリル・顔料・ジェッソ・メディウム・他、11×123cm 、2008年)の中心に描かれている自画像のように、作品に衣川自身が投影されているからではない。作家にとって「未知なもの」も「既知なもの」も、衣川 の手を介しているという点で等しく「未知なもの」というよりは「既知なもの」であるのではないか、ということだ。塗りこめられたイメージも、浮かび上がっ たイメージも、「未知」も「既知」もすべてがフラットに共存しながら一つの画面を形成している。衣川の作品は多くのイメージの集合によって外に向かって開 かれているように見えながら、見方によっては先に記した理由から内に閉じてもいるのである。切手が剥がれないよう糊で貼付けられているように、まるで琥珀 の中に閉じ込められた昆虫のごとくそれらは封印されているように見える。



《ドローイング連作》
(2008-2009年 / 鉛筆・アルシェ)



《スクラップブックのような絵画#3(兄妹)》
(2009年 / 93×92×4.2cm / 木製パネルに印刷物・アクリル・顔料・ジェッソ・メディウム・他)


  


《みえないものにふれてみる# 5(チョウチョ)》
(2008年 / 11×123cm / 紙に印刷物・アクリル・顔料・ジェッソ・メディウム・他)


  だからこそ、衣川が今回初めてまとめて発表したドローイングが大きな意味を持つ。衣川は一階の、横9メートルにもなる大作《みえないものにふれてみ る#10(ボーダー)》(紙に印刷物・アクリル・色鉛筆・顔料・ジェッソ・メディウム・他、175×900c m[11枚組]、2009年)を展示した向かいの展示室に大小さまざまなドローイングを計41点展示した。夥しい情報量の《みえないものにふれてみ る#10(ボーダー)》とは対照的に、まるでそれらのパーツのごとく分断されたモノクロームのイメージの断片は、全体的な展覧会のイメージを引き締め、拡 散させることに成功していた。それらは衣川の手によるものでありながら、描かれているものが断片的な光景であること、そしてモノクロであることの二点に よってその他の作品とは別の見方を促したのである。すなわち衣川の個人史に留まらず、私たちがどこかで見たことがあるかもしれない、可能性の光景を紡ぎ出 したのだ。その光景が、《みえないものにふれてみる》シリーズなどその他の作品があるからこその効果であることは言うまでもない。
そもそも一人の作家による作品が、この世界すべてを包括しているかのようなことなどあり得ない。私たちが見る作品に表現されているものは常にこの世界の断 片であり、鑑賞とはつまりその欠片を一つずつ丁寧に拾っていくという行為にほかならない。自閉することなく、そのことで世界が開けていくことを期待しなが ら。






《スクラップブックのような絵画(ニホンノキ)》
(2009年 / 184×184×4.2cm / 木製パネルに印刷物・アクリル・顔料・ジェッソ・メディウム・他)

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・開催展示再考論評1

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・展示企画書


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