History and The Future of neutron
- ニュートロンの歩みとこれから / 過去から未来へ、京都そして東京 -
2001年7月、当時の京都市中京区・新京極三条という繁華街のアーケードの上に突き抜ける雑居ビルの5階に、neutronは誕生しました。 neutron(ニュートロン)とは英語で「中性子」の意味であり、これは物理科学の世界で中性子が様々な分子構造における接着剤的な役割を果たし、それ によって分子や物質が安定しているということに由来し、転じて今の世の中において表現者であるアーティスト(クリエーター)と、それを本来楽しむべき受け 手の人々を繋ぐ役割を担うべく、代表である石橋圭吾が付けた名前です。
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従来の美術画廊、レンタルギャラリー、はたまた流行のカフェ・ギャラリーのどれにも属さぬユニークで斬新なアイデアによって、neutronは瞬く間に話 題となり、京都及び関西はもちろん、今では日本全国から若手気鋭作家がその発表の場を求めて集うようになりました。そのきっかけと言えるのが、店内カフェ スペースにて自由に作品を発表する装置としての「アーティスト登録システム」(統一様式のポートフォリオを店内ファイル棚に登録し、ウェブ上でも登録画面 が作成され、鑑賞者やクライアント、キュレーターなどとダイレクトに繋げる仕組み)が挙げられます。これは極めて自由度の高い登録システムで、領域も現代 美術のみならずイラストレーション、デザインなどにまで及び、まさに京都の文化発信基地としての役割を果たすようになったのです。
一方、展示スペースとしてのギャラリーは当初は小部屋程度のもので始まり、やがてすぐに同ビルの地下一階にも大規模な展示室とアートショップを拡充するに 至り、それぞれで意欲的な企画展を連発することにより、作家及びギャラリーの知名度は飛躍的に向上しました。 |
(三瀬夏之介展風景 2008/5 ) |
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それまで当たり前とされてきたレンタルという 手法を作家の目線から否定し、展覧会を常に作家とともに作り上げることと捉え、地道にその活動と歩調を合わせて進むことで、やがて大和由佳や三瀬夏之介と いった全国区の作家を輩出するまでになりました。そしてその後に続く期待の新鋭達もキラ星のごとく登場し、もはや京都というローカルな土地に限らぬ影響力 を発揮するに至ります。
2005年には現在の烏丸三条・文椿ビルヂングに完全移転し、その大正建築の魅力とともに、本格的なカフェ・ダイニングと意欲的なギャラリーの組合せに よる店舗は人気を博し、地元のビジネスマン、OL 、学生はもちろん、家族連れから観光客までが訪れるスポットとなりました。石橋が夢見てきた「世の中をもっと楽しく、もっと美しく」の想いは neutronを通じて京都という町の中心で育まれ、いよいよその枝を東京に伸ばそうとしているのです。
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美術というものを世の中において別格・単体で扱うのではなく、もっと人間の生活そのものに寄り添った形で提案したい。つまりはそれが、「衣食住」を基本と する日常生活へのアプローチに繋がります。京都ではまさに「食」と手を携えることで美術を本質的に身近に感じられる空間を現出し、知らず知らずのうちに日 常の中へ美術を刷り込むことに成功しています。それは単なるカフェ・ギャラリー的な単純な発想ではなく、カフェでありギャラリーであるそれぞれの本質を徹 底的に探求し、それぞれを本格的なサービスとアイデアで発展させることで実現した、奇跡のような出来事でもあるのです。そして東京では、南青山の閑静な住宅地にある一軒の建物との出会いが決定的に作用しました。本来住居でありながら、四角く白いホワイトキューブの要素を 多分に持つ内部空間は重層的で、居抜きの部屋にはキッチンやバスルームまで存在し、まさに石橋が考える「住」との繋がりを模索する場所としてぴったりのも のだったのです。 |
( 大和由佳展風景 2008/5 ) |
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ここにおいては1 階から3階までそれぞれの空間を特徴付け、関連させながらも別々の発表を行い、お客様に寛いで頂き,サロンの様に通って頂き、そして作品をお客様の手元ま で送り届け、生活の一部として頂くことを目的としています。本質的に全てが展示空間であり、一方でブティックやセレクトショップのような目線で楽しんで頂 ける「お気に入りの店」でありたいと思っています。
私達は単に作品が売れれば良いとは思っていません。作家がこの時代に何を表現したいのか、伝えたいのかをまず尊重し、一方では石橋を代表とするギャラ リー・ニュートロンとしての主張を持ち、その両者が共有する問題意識をいかんなく発揮する場所としてのギャラリーこそが、neutronなのです。全ての 展覧会はneutronのディレクションによるものであり、作家は日本全国(海外も含む)から共鳴する気鋭の作家達。京都という信頼される美術産地からの ダイレクトな作家・作品の発表はもちろん、皆様に知って頂きたい、見て・感じて頂きたい注目の存在ばかりを毎回ご紹介致します。展覧会の会期は3週間を基 本とし、気ぜわしい日常生活の中でも足をお運び頂ける可能性を少しでも増やそうと、じっくりと取り組む姿勢です。
neutronは今の日本に生まれる美術を、アイデアを、まず何より今の時代に生きる日本に住む方々に知って頂きたいと思います。「アートバブル」と言わ れて久しいですが、いびつに仕組まれた「バブル」はいつかはじけ、美術本来の価値さえも貶めることになりかねません。海外マネーに頼ってばかりの今までの 美術業界とは一線を画し、まさに今から日本に本当の美術マーケットシーンを作るため、1人でも多くの方に気軽にお越し頂くことから、始めたいと思っていま す。
これからもneutronは皆様の生活に寄り添って、一歩一歩、歩んでいきます。その先に、本当の豊かな生活と美術による人生の喜びがあることを信じ て。現代に生きる私達が、日常の中に必要でありながら足りないもの。それはまさしく、現代の日本に生まれる進行形の美術ではないでしょうか。
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ニュートロンは2001年の創業以来、まさに私達の生きるこの時代に産声をあげ、羽ばたこうとする気鋭の美術作家とともに歩みながら、もっと日本の現代生活を豊かな・楽しいものにするために、数々の展覧会を開催し、ユニークな作品を紹介してきました。
2009年、その評価と注目度が高まるのと時を同じく、いよいよ東京にもニュートロンの新しいギャラリーがオープン致しました。京都はもちろん、全国か ら集う日本の気鋭美術作家とその作品、デザイン、アイデアをご紹介致します。場所は南青山・外苑前。閑静な住宅地に位置する三階建の白く真四角な建物は、各フロアごとに性質が異なる展示空間を持つ、複合的でありサロン的なギャラ リーとなります。「食」に寄り添う形でカフェ・ダイニングを併設した京都店舗とは趣を変え、「住」をテーマにしたスタイルで、京都はもちろん、全国から集 う日本の気鋭美術作家とその作品、デザイン、アイデアをご紹介致します。ここは皆様のとっておきの寛ぎの場であり、出会いの場であり、自分の中にある美的価値観を再発見することのできる場所となることでしょう。ぜひあなたの お気に入りのブランドの一つに、「neutron」を加えて頂ければ、嬉しい限りです。 |