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neutron tokyo 3F mini gallery Exhibition

大和 由佳 展 「未踏の土地へ」
2010年6月9日(水)~6月27日(日) [ 会期終了 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

ギャラリーニュートロン代表 石橋 圭吾

 2009年2月。neutron tokyoのオープニング企画第二弾として、建物全部を用いての大規模な個展を行った大和由佳。1階には大胆にも仮設の池を作り、ブロンズを鋳造して大量 の「実」を現出させ、天井から床面あるいは水面ぎりぎりに吊るすというインスタレーションは静かなる緊張と持続する時間の重力を感じさせた。2階から3階 にかけては「はんだごて」で紙やインクジェットプリントの写真を焼き切り抜いたドローイングや、同じく「はんだごて」で側面を焼いたアクリルの立体作品、 さらにはガラス瓶に砂を重ねたインスタレーション等、その時点での集大成と言える内容で、非常に高い評価を獲得する。

  その年の夏には、群馬県は中之条町で行われたビエンナーレに参加。丘の上の中学校跡地を使い、校庭であった広場には地面をくり抜いて鳥型の枠(中には水 が溜まる様な仕掛け)を多数設置し、片や校庭を見下ろす構図で校舎の二階には、前述のインスタレーションと対を成す様に教室の床にウレタンニスで鳥の形が 模され、天井からロープで吊るされているような格好で塗られている。本来は頭上の空を羽ばたくはずの鳥が、地面あるいは床に放たれていることによる不思議 な感覚は、私達の足元に対する意識を急におぼつかないものへと変化させるものでもあった。

  そして今年の1月に新宿眼科画廊で企画された個展では、アトリエから作品を持ち出した後に残る絵具の痕跡から着想を得たという、新しいテーマの平面作品 を含んだインスタレーションを発表。それまでの印象とはがらっと変わったように見えたのは、使われている絵具やインクのカラフルな華やかさによるものであ り、従来の地味な色彩が特徴となっていた作家のイメージを裏切るものでもあったが、もっと大きな出来事としては前述の「平面」作品の存在が挙げられる。後 に4月のアートフェア東京にも新作を出展した「土地 / 湿原の杖に依って」と名付けられたこのシリーズは、石粉粘土をうどんの生地の様に伸ばし、釘やネジ、チェーン、草木、レースなど身近な物を押し付けて跡形 を付け、粘土が乾いた後に絵具を「こぼした」様に流し、それが乾いた(水分が蒸発した)後に残る色の痕跡を見せている作品である。壁に設置していることか らも「平面」作品として提示されることとなるが、明らかにそれは絵画の成り立ちとは違い、作業工程においては彫刻的な要素を持ち、時間の経過によって定着 した痕跡という事であれば(まさにアトリエの現場の再現という意味で)インスタレーションの小型化・物質化と言えなくもない。どうであれ、この試みは大和 作品を体系的に捉える上で極めて重要な地点に存在することは間違い無く、実はこの6月に開催する個展においても、この制作の延長線上にある新作が見せられ る。

  この一年余りの間にテーマが多岐に渡っているように思えるかもしれないが、大和の考え、試す事は本質的には変わっていない。それを具現化する手法や素材 が異なるだけで、常に大和作品は同じ方向へ集約するものであると断じて良いだろう。大和が繰り返し確認しようとするのは、私達が自分の足で立っているこの 地面が、本当に「平らな」面であるのかどうか。私達がそれに対し、まっすぐ立っている(存在している)のだろうか。つまり「水平」と「垂直」の二つの軸が 定まっているかという問いが、どの作品発表においても根本的に関わる重要な問題であり、それを発端として作家のイメージは縦横無尽に展開される。昨年から の一連の行為は床や地面、あるいは平らな面を確かめる作業が続いている事から、どちらかと言えば「水平」(地球あるいは土地、領域を概念的に示す「平ら さ」)の方に主軸があるようにも見える。

  詩的な表現故に、鑑賞者による解釈や楽しみ方は自由であるのだが、作家自身も自らのコンセプトに対し自問自答を繰り返す故、過去の展示発表に対する自己 批評・解釈もおおらかに広がりや変化を見せることがある。大和の作品世界があらゆる場所に、様々な方法で現出と消滅を繰り返して来たからこそ、作家自身も その確認作業の結果として認識するに至った事実が確かに存在するのであり、その作業は大和が作家としてイメージを生み出す動機であり続ける。言い換えれば それは、大和由佳がこの世に存在する(した)証明でもあるのだろう。

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