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neutron tokyo 1F main gallery + 2F salon Exhibition

「そして砂漠はデザートに姿を変える」 渡辺おさむ (立体造形 / インスタレーション)
2011年11月2日(水)~11月20日(日) [ 会期終了 ]

Comment, gallery neutron ISHIBASHI Keigo

ギャラリーニュートロン代表 石橋 圭吾

 月並みな言い方で恐縮だが、季節は「食欲の秋」「アートの秋」である。木々が色付き、本格的な寒さの到来までに猶予があるこの頃、まさに人間の欲求を満た すには最高のシーズンであると言う事だろう。そんなベストタイミングでご紹介するのは、既にテレビ・雑誌などメディアでも盛んに取り上げられ引っ張りだこ のスイーツ王子・渡辺おさむである。

  彼はFRPとモデリングペーストを主な材料として、洋菓子のデコレーションの装飾性を最大限に誇張し、美術作品として構築するユニークな試みを続ける気 鋭の作家である。自身のデザインを基に工場に躯体を発注し、仕上げは自らの運営する工房で行うという現代的な制作過程を経て、実に多様で豊富な作品を次々 と生み出しては話題になっている。作家自身も甘いマスクと「王子」の名に相応しい服装で期待に応え、そのPRは数々の媒体に取材されることからも成功して いると言えよう。ファンは女性に留まらず老若男女幅広く、まるでスイーツが世代を超えて愛されるように、彼の作品もまたアートの垣根を越えて多くの人を魅 了する点で、現代日本アートの中で見過ごせない重要な人物である。そんな彼がゲスト作家としてニュートロンで初の個展を開催するのに併せ、同会場の三階で は同じくスイーツを主なモチーフとして絵画を制作する行千草が個展を行い、まさに全館通じて甘い香りの充満する展覧会となることだろう。

  一見するとカワイイだけのオブジェに見えるかもしれないが、渡辺おさむの世界観には意外な程深く、日本の美意識が根付いている。寺社仏閣に存在するモ チーフをデコレーションする作品や、その名の通り「karesansui」(枯山水)と題されたホイップクリームによる石庭のような空間構成(会場を広く 使ったインスタレーションや、それを凝縮した平面作品に展開される)などを見ると、彼が日本という雑食性の高く柔軟に物事を消化し、かつ新しいクリエイ ティブを発揮する辺境の国であることを最大限に生かして制作を行っていることが証明される。そして作品は既存の文化(ファッション、建築、デザインなど) とも密接に関係し合い、新たなフィールドを開拓しているのであるから、見ための甘さを侮ってはいけない。

  現代美術的観点から見ると、彼がスイーツ・デコレーションでオブジェやインテリアを覆う行為は、同世代の作家・名和晃平が「グリッド」「レイヤー」と いったデジタル的発想に基づき、ビーズやプリズムなどを用いて物質の表層を覆い隠して物事の本質を問う制作にも通じる点がある。かたや甘く可愛いホイップ クリームとフルーツが盛られ、かたやストイックな工業製品のごとき佇まいは正反対に見えるが、既存の事物の表層を覆うことで別の角度からの視点を設け、人 間と物質の間柄に強烈な問題意識を感じさせる部分は見逃せない共通点である。

  今回、渡辺おさむはneutron tokyo史上初の試みとして、真っ白く真四角の特徴的な建物外観をショートケーキのような物体に見立てる。1階では岡山県倉敷市の大原美術館での個展で も発表予定の「karesansui」のインスタレーションをホイップクリームの白色を貴重に静かに展開してみせ、スイーツを超えた宇宙観すら感じさせる ことだろう。そして2 階では、一転して従来のカラフルな色彩とユニークな造形がふんだんに楽しめるオブジェの数々。さらには3階で同時開催の行千草とのコラボレーション作品も 登場する。彼の魅力を余すことなく感じることの出来る、体感型の一大スペクタクルとなるだろう。

  食べる事は生きる上で重要な本能であり、欲求である。人間は美味しい食事を舌で味わう前にまず目で見て楽しみ、味を予感し、匂いで確かめながら最後に舌 へと運ぶ。その一連の流れで視覚がどれほど重要なのかは言うまでもない。渡辺おさむの提示するアートは、スイーツの味覚以前の体験(すなわち視覚で味わう こと)を本質的に抽出し、かつ時代とともに洗練と変遷を繰り返すデコラティブな文化を反映し、実に戦略的で本能的な表現へと昇華するのである。

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